このページは近未来のフィクションです。実在の団体名等が出てきますが、無関係です。

幽体離脱

恒保2年

 その病室は義体科の一番奥にあった。脳を義体に搭載できる今、備え付けの生命維持装置がその威容を誇っている病室は、義体科の中でもここだけだった。そして、その栄養液の中に入っているのは私の脳だ。私が、自分が人間たる所以と結論付けた私の脳が、今厳然として目の前にある。こんな視点は、私が人間ならばありえないだろう。私は今、人外の存在なのだ。自分の唯一の生体部分が、この数週間、私は社会的に死んでいるという事実を、私に突き付ける。私の憂鬱は、さらにその色を濃くした。

2012/11/11

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