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認知症の義体者 暴走相次ぐ

中曰新聞 第三種郵便物認可

安祥10年12月17日(火)

 義体化技術が確立されてから今年で55年になるが、近年、全身義体者が認知症を発症して老人ホームに入所した後、施設の建物や備品を破壊したり、職員にけがを負わせたりするなどの問題が深刻化している。

 名古屋市守山区の特別養護老人ホーム「ひまわり」では、一昨日、認知症を発症している男性入所者(78)が暴れ、男性を落ち着かせようとした同施設の職員を突き飛ばして全治三週間の怪我を負わせる事件があった。この施設では、以前にも一度、別の全身義体の入所者が職員の静止を振り切って深夜の町を徘徊し、保護しようとした警察官に軽傷を負わせる事件が発生している。この事態を重く見た同施設は、人間による認知症の全身義体者の介護を諦め、介護用ロボットで対応することに決定したが、ロボットによる介護を受けた入所者が今まで以上にストレスを抱えることになる懸念もある。

 一宮市の認知症グループホーム「愛の里」では、今月2日、同じく認知症を持つ男性入所者(85)が、ベッドの手すりを叩き続け、手すりと、自分の義体の腕の両方を損傷する事件が起こった。だが、この施設では、人間による対応を重んじ、事件後も人間の介護士によるサポートを続けている。同施設の所長、石川正則氏は、「このようなことが頻発すると、若者の介護離れに拍車がかかってしまう」と危惧している。

 このような事態は、5年ほど前から問題視されている。政府も、安祥6年に、義体者介護基本法を成立させてはいるが、この法律は、認知症を患った全身義体者の介護は基本在宅としており、介護する家族に全負担を強いるものである。また、身寄りのない要介護者はこの法律では特に規定がない。このため、身寄りのない全身義体者が認知症を発症した場合、通常の施設でほかの生身の入所者と生活を共にするしか選択肢がないのが現状である。この問題は、個々の施設だけでは完全な解決は難しく、政府による全身義体者用介護設備の設置などの対策が必要となる。

2012/10/04

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