このページは近未来のフィクションです。実在の団体名等が出てきますが、無関係です。

社会

義体と食糧難を巡る政界の思惑

 地球規模の人口爆発で、智徳7年に世界の食糧需要が供給量を上回り、全世界が食糧難に陥る中、先進国の中で特に打撃が大きかったのは、食糧自給率わずか40%の日本であった。智徳年間は、アメリカやオーストラリアなどの環太平洋諸国から輸入することが一応可能であったが、恒保8年、アメリカ農務省が、全ての国に対する農畜産物の輸出規制を行ったため、日本の食糧事情は一気に悪化した。同年、国会では農水大臣を中心に緊急会合が開かれ、穀物に対する最低価格保証や、それによる休耕田の作付再開の促進、穀物を大量に消費する畜産業の規制などを柱とする「分子倍増計画」が実行された。

 しかし、それでも自給率は90%台止まりであった。そのため、恒保14年、苦肉の策として、極秘裏に「分母削減計画」がまとめられた。これは、主に、食事をしない全身義体者を必要以上に増やすという計画である。全身義体化手術は最先端医療なので、通常、日本の慣例では手厚い補助など望むべくもあるまいが、この計画の下に設定された高額な補助金で、手術費用ほぼ全額を賄える。一方、一部義体化には補助金が出ず全額自己負担となるため、大規模な一部義体化手術を検討している患者が、全身義体化に流れるという寸法である。対象となる人数は、日本国民全体から見ればごくわずかだが、そのわずかな分も切りつめなければならない状況であった。

2012/12/08

義体と国民健康保険

 義体は常に時代の最先端技術であるため、日本の慣例では健康保険が利かず、全額自己負担のはずだが、全身義体だけは、これまでにない全く新しい医療として、保険の適用が認められている。これは、智徳25年の義体法成立当初からのものである。一方、一部義体化手術は、電動義肢の延長と見なされているので、健康保険が全く利かない。義体が実用化されてから、筋電義手には健康保険が適用されるようになった。

智徳25年:【全身義体化】保険適用あり、【一部義体化】保険適用なし

恒保14年:【全身義体化】手術費用免除、【一部義体化】保険適用なし

2012/12/08

臨床心理士

 全身義体化手術を受けた者、特に事故などで緊急に義体化された者は、術後、自分の体が全てなくなってしまったことに対して強いストレスを感じ、精神が不安定になることが多い。そのような患者の心のケアにあたるのが、義体科に配属された臨床心理士である。臨床心理士は、大卒でないとなれない割には給与が少ないといわれているが、義体科勤務の臨床心理士は精神的に激務のため、多少給与面でも優遇されている。

2012/12/25

義体科の医師

 心理的な面をサポートする臨床心理士に対して、義体の操作法を教えるなどの役割も担うのが、義体科の医師である。医学のみならず工学の知識も必要になるため、義体科の医師は相当な秀才である。

2012/12/25

ホーム>社会情勢